埼玉、栃木、群馬、茨城の4県にまたがる宗教法人カトリックさいたま教区の一人の司祭
として、フィリピン、ベトナム、インドネシア、インド、ペルー、コロンビア、メキシコ、
ブラジルなどの国々から来日している信者に、出会う機会が多い。教区の日本人信徒数は2
万人であるが、外国からに移住信徒数は、その5倍の10万人にのぼる。信者は、同じ信仰
に結ばれているが、国籍、文化、習慣、言語などを互いに尊重しながら、多様性の中の一致
を求めている共同体になろうとしている。外国から来た信者にとっては、協会に行くことは、
すぐ仲間
に受け入れてもらえるという、異国に在っての不安を緩和するきずなになっている。
 ある日、南米の女性が、現在連絡がつかないペルー人男性との間に生まれた男の子を抱え
て、泣きながら教会に来た。そして、自分お身の上を話し始めた。彼女は貧しい家庭で生ま
れ、
子どもの頃、親戚から性的なハラスメントを受け、20歳のときに3か月の観光ビザで
来日した。継続できるような仕事に就けず、やむを得ず水商売に出稼ぎする時期もあった。
生まれ故郷で経済的に生計を立てられないので、3回ほど来日した。妊娠して7か月の時に、
入管の使う言葉なら「不法滞在」、教会で使う言葉なら「超過滞在」の理由で、捕まえられ
たが、身ごもっていたので、子どもを産んでから帰国すると約束させられて解放された。入
管で帰国する約束をしたにもかかわらず、日本での生活が延び延びになってしまった。その
後、不安定な生活に疲れきって、帰国する飛行機代を奇跡的に集めて、入管に行き、日本に
3回も来たこと、現在超過滞在者であることをすべて打ち明けて、帰国ができるようになっ
たと言う。
 これからどうなるかと胸を締め付けられるような具体的な例は、たくさんある。出産する
お金のない女性、健康保険に加入する余裕がまったくないので病気になったとき診てもらえ
ない人たち、多少の診察料を持っているが自分の病気について日本語で説明できないし、先
生や看護師の説明を理解できないので諦める人たち、生まれ故郷と日本の間に、母子、夫婦
が引き離されて精神的におかしくなるほど苦しんでいる人たちの例などなど。
 日本にあるカトリック教会にとって、外国から来ている方々との出会いと交わりは、共同
体に豊かさをもたらす恵みである。教会は、旧約聖書に、「寄留者があなたの土地に共に住
んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちの土地
に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。」(レビ記19章33節?34節)と書
いてあるように、移住者を温かく迎え、共同体に受け入れ、日本の社会や生活に一日も早く
慣れるように努めたいものである。いのちの電話をはじめ、色々な援助団体の働きに大きく
期待している。