犬に学ぶ(伊澤 裕)

広報誌 栃木いのちの電話 第114号

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犬に学ぶ
宇都宮市立富屋小学校 伊澤 裕

最近、直木賞を受賞した馳星周さんの「犬と少年」という小説を読みました。東日本大震災で、飼い主からはぐれた犬が東北から九州まで 移動しながら、様々な問題を抱えた人間に寄り添い、支えとなり、犬好きの人たちには、改めて飼い犬に「ありがとう」と言いたく なるような物語です。

犬は、人間社会にはなくてはならない存在になっており、盲導犬、聴導犬、介護犬、セラピー犬等、訓練によって様々な場で活躍しています。 発掘調査などから、犬は、縄文時代から人間生活の中に入り込んで、人間と協力し合って生活し合って生活していたこともわかっております。 人の死の看取りをする犬もいる福祉施設もあります。私の以前勤務していた不登校の関係機関では、犬とのふれあい活動を週1回位置付けており、 家から出られなかった不登校の子どもたちが、まずはその時間だけ参加することができるようになり、そこから不登校の改善につながって いったケースも多くありました。

さて、誰かの話を聴くとき、我々人間は、「何が話されたか」の言葉や事柄などと、「どう話されたか」の感情などの部分も聴いています。 前者を脳の左半球で、後者は脳の右半球で管理しています。最近の研究では、犬が人間の言葉を聴くときにも、人間と同じように言葉や 事柄などは脳の左半球で、感情などの部分は脳の右半球で受けており、大と人間は情報処理のプロセスが非常に似ていることがわかってます。 もちろん、犬が人間の話を全て理解しているわけではありませんが、犬は、「誰がどんな気持ちで、何を話しているのか」ということに、 注意を向けることができるのです。

犬は、話せません。犬が問題解決をしてくれるわけでもないし、大が人間と同じように傾聴してくれるわけでもありません。 犬が話しかけても、うなずいたり、相槌を打ったり、話を返してくれるわけでもありません。しかし、何も判断せず、何も否定せず、 ただそこにいて、人間の気配に意識を向け続けている犬から、深く元気づけられ、勇気づけられ、励まされることがあります。 「聴いてもらえた」「寄り沿ってもらえた」と感じることがあります。犬が、選択理論心理学でいうところの愛・所属の欲求を 満たしてくれているのです。純粋に人間を思い、寄り添って、全身で人間の気配に意識を向けている犬の姿に学ぶことが いろいろありそうです。

我が家の愛犬にも感謝!「いつもありがとう。さあ、散歩に行こう!」

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