:丸山 隆:「聴くということ」

広報誌 栃木いのちの電話 第124号

PDFはこちらから参照可能です。

広報誌 第124号 / シリーズ listen

「聴くということ」
栃木県カウンセリング協会(TCA) 丸山 隆

「手を打てば鳥は飛び立ち鯉は寄り/女中茶を持つ/猿沢の池」。この歌は、奈良の興福寺の高僧が詠んだものだそうです。手を叩くという一つの行為に対して、それを受け取った相手によってその反応は様々で、「受け取り方(聞き方)=認知」次第で反応が変化するという好例です。

電話相談の場合で考えると、聞き方次第で文字通り、相談内容や主訴の方向性が変わってしまうということでしょう。相談者の訴えに対して相談員の側に認知の歪み=偏見(バイアス)が生じていると相談者の主訴をうまく受容できません。電話相談では、「聴くことが何より大切だ」と言われる所以です。

「月影の至らぬ里はなけれども/ただ見る人の心にぞ住む」とは法然上人の御歌ですが、これを相談的に解釈すれば、相談員の物の見方や考え方にバイアスがかかっていると、実際にあるものが見えなかったり、ないものが見えたりすることになります。

そうなれば、相談者の主訴を聞き逃し、大切な気持ちの部分を受け取ることに失敗することになりかねません。

ですから、自分の聴き方の癖を知ったうえで、いったんそれを脇に置き、相談者の訴えを正確に聞くことが大切です。それが「よーく聞く」すなわち「聴く」ことに繋がります。

そうすれば、相談者の表面的な言よりも、言わんとしている内面の声を聴くことができ、より深い応答が可能になるという訳です。

「月影の至らぬ里はない」のですから、相談者の声にきちんと耳を傾けさえすれば、誰であれ必ず主訴を理解し、相談者の悩みを受け止め、共感することができるはずです。

相談分野できくというとき、「聞く」という字ではなく、「聴く」という漢字を当てる理由でもあります。漢字の成り立ちの如く「目と耳を使って心を込めて聴こうナ」という聞き方です。それさえ実践できれば、あなたはきっとステキな電話相談員になることでしょう。

◆最初のページへ◆◇↑ ページの先頭へ◇